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養子縁組と相続
札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。
前回の記事で、養子縁組についてのお話しに触れましたが、相続においても養子縁組は非常に関わりが深い制度です。
本日は、養子縁組に関する詳細および相続との関連についてご説明いたします。
[目次]
〇普通養子と特別養子
養子縁組とは、血縁関係にない者同士が法律上の親子関係を結ぶための制度です。
養子縁組によって親となった者を“養親”、子となった者を“養子”と言います。
“養子”という言葉には、男性・女性どちらの性別も含まれていますが、女性の場合は“養女”と呼ぶこともあります。
養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つの制度があり、それぞれ養子の目的や必要な要件、実親との親子関係などが異なります。
<普通養子縁組>
■目的:家の存続、相続対策などのため。
養子縁組の成立後も、実親との親子関係は存続しますが、養子は養親の苗字に変更し(既に婚姻により配偶者の苗字へ変更している場合を除く)、養親と養子はお互いに扶養する義務を負うことになります。
戸籍の記載は“養子”もしくは“養女”となります。
養親と養子が養子縁組を結ぶことに合意し、以下の要件を満たした上、市区町村役場への届出を行う事で成立します。
【 要 件 】
①養親が20歳以上であること
②養子が尊属または年長者ではないこと
③後見人が被後見人を養子とする場合、家庭裁判所の許可を得ること
④配偶者のある者が未成年者を養子とする場合、原則として夫婦共同で養親となること
⑤配偶者のある者が縁組をする場合、原則として配偶者の同意を得ること
⑥15歳未満の者を養子とする場合、養子の法定代理人の承諾を得ること
⑦未成年者を養子とする場合、原則として家庭裁判所の許可を得ること
<特別養子縁組>
■目的:子の福祉や利益のため。
養子縁組により、実親との親子関係が終了し、養親と養子の間に血のつながった実の親子と同様の親子関係が発生します。
戸籍の記載も、実子と同じく“長男”や“長女”などと表記されます。
養親になることを望む夫婦の請求に対し、以下の要件を満たす場合、家庭裁判所の決定を受け成立します。
独身の方や事実婚の場合は養親になれません。
【 要 件 】
①原則として、養親となる者が夫婦共同で縁組をすること
②一方の養親が25歳以上であり、もう一方の養親が20歳以上であること
③原則として、養子が15歳未満であること
④原則として、実方の父母の同意を得ること
⑤子の利益のための特別の必要性があること
⑥養親となる者が養子となる子を6か月以上監護していること
〇養子と相続
普通養子であっても、特別養子であっても、養子は養親の相続権が認められます。
養子は被相続人(死亡した人)の実子と同じく、法定相続順位は1位に該当します。
<普通養子>
実親および養親、両方の相続について相続人となります。
尚、養子が死亡した時は、養子に子または孫などがいない場合に限り養親は相続人となります。
<特別養子>
養親の相続についてのみ相続人となります。
実親との親子関係は消滅する為、実親の相続時は法定相続人とはなれません。
普通養子の場合と同じく、養子が死亡した場合は、養子に子または孫などがいない場合に限り養親は相続人となります。
また、養子縁組には相続税における節税効果があります。
相続税とは、被相続人の遺産(財産)を取得した際に課税される国税です。
相続税には基礎控除があり、課税価格がその控除額以下の場合には相続税がかかりません。
相続税の基礎控除額は以下の式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
養子縁組により子(法定相続人)が増えることで、基礎控除額が増えます。
その結果、相続税が安く済むことになり、普通養子を迎える目的の一つとされています。
しかし、それでは相続税を逃れる為だけに何人もの養子を迎える原因となりますので、普通養子は、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか法定相続人の数に入れることができない仕組みとなっています。
尚、特別養子は実子とみなされる為、この制限はありません。
また、上記の基礎控除額計算式の法定相続人の数には相続放棄をした人も含めることとされています。
これは相続放棄をした人が相続放棄をしなかった場合と比べ、相続を受ける他の相続人の相続税額が増えてしまうことを防ぐ為です。
更に、相続税の計算では被相続人の死亡を原因として支払われる生命保険金や死亡退職金について、一定額までは非課税として扱われます。
非課税限度額は以下の式で求めることができます。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
この時、支払われた生命保険金と死亡退職金ははじめに合算せず、それぞれでこの計算式で非課税額を求めることになります。
尚、基礎控除額の計算と同様に、普通養子については法定相続人にカウントできる数が制限されています。
〇さいごに
いかがでしたでしょうか。
被相続人に実子がいる場合、実子から見ると、養子よりも実子の方が相続について優先されるイメージがある方もいるかもしれません。
しかし、上記でご説明した通り、実子と養子はどちらも法定相続順位1位であり、全く同等に扱われます。
特に普通養子の場合、実子が養子縁組の事実を知らず、相続が発生して初めて養子の存在を知るケースもあるようです。
養子縁組を考える場合は、実子や他の相続人との間にトラブルが発生する可能性も十分考え、慎重に検討することも必要です。
遺言や相続に関するご相談・ご質問などがございましたら、行政書士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。